社会と調査
京都通信社の本

社会と調査 第17号
特集 社会調査と政策のあいだ

表紙
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特集紹介

 政策の形成・評価・実践と社会調査をつなぐために,私たちはなにを考えるべきなのか。これが本特集の基本的な問いである。

 エビデンス(科学的な根拠)に基づく政策(Evidence-Based Policy)への要請が,近年,高まっている。その実践には政策立案の過程に社会調査を適切に位置づける必要があるだろう。また,調査自体が「つかえる」ものでなければならない。

 同時に,調査は,それ自体が社会的な営みであり,そこにかかわる人びとの対話や関係の構築をとおしてさまざまなものを生みだしていく。それが一連の政策過程になんらかの効果をもたらすこともある。ワークショップやアクション・リサーチはその一例だ。

 このような観点から,本特集では5名の方に「社会調査と政策のあいだ」について考察していただいた。なお,ここであつかう政策は,国や地方自治体によって立案・実施されるものだけではなく,市民レベルでの取り組みまでふくむ「広義の政策」である。また,調査については,上記の意味での政策の立案や評価などを目的として行うものを想定している。これらの論考をとおして,政策と社会調査をつなぐ条件について考えてみたい。

稲月 正「特集紹介」から抜粋

目次

巻頭言

アンケート調査と調査表
社会調査協会 理事 三浦典子

特集 社会調査と政策のあいだ

論文1. 特集「社会調査と政策のあいだ」によせて
稲月 正
論文2. 社会を良くする実践と研究──個人的経験から
津富 宏
論文3. 自治体シンクタンクの現状と課題
森岡淸志
論文4. 都道府県庁における県民意識調査の実態と職員研修の現状
——長崎県・愛媛県・兵庫県の事例を中心として
大谷信介
論文5. 政策形成における合意形成プロセスとしての市民調査
——社会学的認識の活かし方
宮内泰介
論文6. 熊本地震と社会学の交差圏
——社会調査のリアリティに向けて
徳野貞雄

Refereed Paper

世論調査における回答の不安定性をめぐって
斉藤慎一・竹下俊郎・稲葉哲郎
オンラインゲームの仮想世界が現実世界の対人関係の質および量に及ぼす影響
高田佳輔

調査の現場から

「商圏センサス」からみる時系列Web調査の有用性と活用事例
木暮絵里子

調査実習の事例報告

学生の主体性が発揮される「自主自律」運営の社会調査実習の試み
——名古屋市立大学の事例報告
藤田栄史
東日本大震災と福島第一原発事故から遠く離れて
——「自主避難者」に関する熊本大学文学部での社会調査実習
多田光宏

働く社会調査士

一人ひとりの声を「世論」に
高島美保
行政職に求められる視点
五十嵐友美

Commentary

政策効果の計量分析
——一階階差GMM推定の手順と実際
柴田 悠

Column 調査の達人

秋元律郎
臼井恒夫
フロイド・ハンター
——みえにくい事実の探求者
門口充徳

Column 世界の調査/日本の調査

Common Core of Data(CCD)
——アメリカの初中等教育レベルのユニバース・データと教育政策への活用
渡邉 聡
2013年教育・社会階層・社会移動全国調査(ESSM2013)
中村高康

Column 社会調査のあれこれ

Web調査の基礎研究について
山田一成
“視聴者調査”の曲がり角
中野佐知子

私の3冊

物語に規律を与え,数字に血を通わせる
佐藤郁哉

書評

松本 悟著『調査と権力——世界銀行と「調査の失敗」』
盛山和夫
谷 富夫著『民族関係の都市社会学──大阪猪飼野のフィールドワーク』
五十嵐泰正
中澤 渉著『なぜ日本の公教育費は少ないのか——教育の公的役割を問いなおす』
大岡頼光子
松尾浩一郎著『日本において都市社会学はどう形成されてきたか——社会調査史で読み解く学問の誕生』
鶴田幸恵
佐藤正広著『国勢調査 日本社会の百年』』
清水 誠

執筆者紹介

三浦典子
社会調査協会 理事、山口大学 名誉教授
稲月 正
北九州市立大学基盤教育センター 教授
津富 宏
静岡県立大学 教授
森岡淸志
放送大学 教授
大谷信介
関西学院大学社会学部 教授
宮内泰介
北海道大学大学院文学研究科 教授
徳野貞雄
一般社団法人トクノスクール・農村研究所 代表理事、熊本大学 名誉教授
斉藤慎一
東京女子大学現代教養学部 教授
竹下俊郎
明治大学政治経済学部 教授
稲葉哲郎
一橋大学大学院社会学研究科 教授
高田佳輔
中京大学現代社会学部フィールドリサーチセンター
木暮絵里子
株式会社日経リサーチ ソリューション第2部 兼 世論調査部
藤田栄史
名古屋市立大学 名誉教授
多田光宏
熊本大学文学部 准教授
高島美保
株式会社日本リサーチセンター
五十嵐友美
新宿区福祉部高齢者支援課
柴田 悠
京都大学大学院人間・環境学研究科 准教授
臼井恒夫
早稲田大学人間科学部 教授
門口充徳
成蹊大学 名誉教授
渡邉 聡
広島大学高等教育研究開発センター 教授
中村高康
東京大学大学院教育学研究科 教授
山田一成
東洋大学社会学部 教授
中野佐知子
NHK世論調査部
佐藤郁哉
同志社大学商学部 教授
盛山和夫
東京大学 名誉教授
五十嵐泰正
筑波大学大学院人文社会科学研究科 准教授
大岡頼光
中京大学現代社会学部 教授
高木恒一
立教大学社会学部 教授
清水 誠
総務省統計研修所 所長