社会と調査
京都通信社の本

社会と調査 第19号
特集 調査と表現——伝えるための戦略

表紙
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特集紹介

 社会調査は社会を〈知る〉ための技術として発展を重ねてきた。今日それは高度な専門性を有するひとつの世界を形成している。こうした〈知る〉力をより意味あるものとして社会の中で活かしていくために,いま私たちは何ができるだろうか。

 本特集では〈伝える〉こととして社会調査を捉え直してみることを提案したい。様々なオーディエンスと関わり合い,調査の成果を表現し,よりよく伝えていくことは,社会調査の社会的意義や社会的役割という見地からも重要であろう。

 第一論文では,社会調査史の源流にある表現への志向を手がかりに「調査と表現」に関する問いの構図を展望する。石倉義博氏・西野淑美氏による第二論文では,学術的知見の提示のあり方や,調査者としての地域への関わり方について論じる。亀井伸孝氏による第三論文では,表現の媒介としての「視覚」に着目し,それを活用することの可能性と諸問題について論じる。青木深氏による第四論文では,調査の成果を「書く」行為に着目し,それが調査者と読者を結ぶ多元的な時間を編成していくさまについて論じる。小倉康嗣氏による第五論文では,社会調査の社会的実践性とその課題を,パフォーマティブな調査表現を試みた経験を踏まえて論じる。

松尾浩一郎「特集紹介」から抜粋

目次

巻頭言

回収率と代表性
社会調査協会 理事 今田高俊

特集 調査と表現——伝えるための戦略

論文1. 社会調査のなかの表現——失われた技術の再発見を
松尾浩一郎
論文2. 調査者として地域に関わること——「希望学」釜石調査から
石倉義博・西野淑美
論文3. フィールドワークにおける視覚的表現の活用
——社会調査実習の成果と近未来の課題
亀井伸孝
論文4. 調査と表現をつなぐ時間——記録文学と歴史的民族誌の方法的検討
青木 深
論文5. 参与する知を仕掛けていくパフォーマティブな調査表現
——関わりの構築へ
小倉康嗣

Research Report

米国における男性の家事育児時間——生活時間調査データを用いて
平井太規

調査の現場から

テレビ番組改善に向けた定性調査の実際
佐藤雅子

調査実習の事例報告

社会調査と社会調査教育のあいだ
——「交通インパクトの社会学的効果に関する第9次調査」を中心に
松橋達矢
メディア学とフィールド調査の接合を目指して
加藤晴明

働く社会調査士

ワクワク感が原点——クライアントとの共感を目指して
森田 更
企業活動における調査の責任とやりがい
栗原瑠理香

Commentary

ASA声明とこれからの統計学の使われ方——最近の心理統計分野の動向から
岡田謙介

Column 調査の達人

ビエール・ブルデュー——対象化する主体の対象化
磯 直樹
篭山 京——調査研究における事実と人間の現代的再考
小林 甫

Column 世界の調査/日本の調査

世界の人口センサス——日・米・英を中心として
阿久津文香

Column 社会調査のあれこれ

原発事故被災者と向き合うことのむずかしさ
吉原直樹
社会調査の軌道をふり返る
波平勇夫

私の3冊

数学,数学心理,そして国際比較
吉野諒三

著者が語る社会調査テキスト

『社会調査法入門』
盛山和夫

書評

セルジュ・ポーガム著『貧困の基本携帯——社会的紐帯の社会学』
妻木進吾
高井啓二・星野崇宏・岡田謙介編著『欠測データの統計科学——医学と社会科学への応用』
荘島宏二郎
稲葉昭英・保田時男・田渕六郎・田中重人編
『日本の家族1999-2009——全国家族調査[NFRJ]による計量社会学』
鈴木 透
友枝敏雄編『リスク社会を生きる若者たち——高校生の意識調査から』
片桐新自
三浦倫平著『「共生」の都市社会学——下北沢再開発問題のなかで考える』
下村恭広

執筆者紹介

今田高俊
社会調査協会 理事,東京工業大学 名誉教授
松尾浩一郎
帝京大学経済学部 教授
石倉義博
早稲田大学理工学術院 教授
西野淑美
東洋大学社会学部 准教授
亀井伸孝
愛知県立大学外国語学部 教授
青木 深
東京女子大学現代教養学部 講師
小倉康嗣
立教大学社会学部 准教授
平井太規
神戸学院大学現代社会学部 実習助手
佐藤雅子
株式会社ビデオリサーチ ソリューション局 専門職局次長
松橋達矢
日本大学文理学部 准教授
加藤晴明
中京大学現代社会学部 教授
森田 更
株式会社サーベイリサーチセンター
栗原瑠璃香
株式会社帝国データバンク
岡田謙介
専修大学人間科学部 准教授
磯 直樹
慶應義塾大学法学部 日本学術振興会特別研究員
小林 甫
北海道大学 名誉教授
阿久津文香
総務省統計局統計調査部国勢統計課研究分析係長
吉原直樹
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院 教授
波平勇夫
沖縄国際大学 名誉教授
吉野諒三
情報・システム研究機構 社会データ構造化センター長・教授(統計数理研究所兼務)
盛山和夫
独立行政法人日本学術振興会 学術システム研究センター 副所長,東京大学 名誉教授
妻木進吾
龍谷大学経営学部 准教授
荘島宏二郎
独立行政法人大学入試センター 試験評価解析研究部門 准教授
鈴木 透
国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部 部長
片桐新自
関西大学社会学部 教授
下村恭広
玉川大学リベラルアーツ学部 准教授