WAKUWAKUときめきサイエンスシリーズ1
バイオロギング 最新科学で解明する動物生態学(廃盤)
- 日本バイオロギング研究会 編
- 発行 京都通信社
- 装丁 高木美穂
- A5判 224ページ
- 定価 1,905円+税
- 国内の送料は無料です
内容紹介
動物たちの不思議に迫る、「新しい発見」が続々と!
「バイオロギング(Bio-logging)」は、バイオ(生き物)+ロギング(記録をとる)を組み合わせた和製英語です。近年、世界中で注目を集めています。
なかなか一般の人が目にする機会のない「バイオロギング」を広くみなさんに知っていただきたいという思いからこの本を出版いたしました。難解な専門用語はなるべく使わずに、わかりやすく書くことを心がけました。
研究成果の社会還元をめざして
──中・高生にぜひとも知ってほしい世界
学問の成果を社会還元したい、若い世代に学問の楽しさ、動物たちの不思議の世界、神秘の世界をぜひとも知ってもらいたい。
そういう思いから、論文をかみくだいて書き直し、写真や図版を多用して、中・高生にも親しみやすい内容になっています。
大学のテキストにも
35種類の動物たちと周辺の情報について47名が執筆しました。執筆者は、北は北海道から南は鹿児島にわたり、調査地も北は北極に近いスピッツベルゲン島のニーオルセン基地、赤道付近ではタイのフーヨン島とタリボン島にアマゾン河中流域、南は南極の昭和基地に至ります。したがって、大学のテキストとしても充分に利用していただける水準を維持しています。
学問成果の紹介だけでなく親しみやすい「こらむ」もあります
学問成果を紹介するだけでなく、基礎的な知識の紹介、フィルードワークでの経験や失敗、そこで学んだことなども織り込んであります。
地球に異変がつづく時代のなかで
地球は人間だけのものではなく、すべての生き物たちの世界であることを知っていただきたいのです。気候変動がもたらす環境悪化は、人間だけが感じているものではありません。すべての生き物が、この異変に翻弄されています。
地球を見る視点を少し変える、あるいはより豊かな視野で、多様性のなかでこの世界を考察できる人が本書を通じて増えるよう願っています。
バイオロギングについて
動物や鳥類の生態と行動の研究に革命を起こしたバイオロギング
バイオロギング(Bio logging)は、日本で生まれた新しい造語にもかかわらず、動物学の世界ではすでに一般的に使われるまでになりました。バイオ(生き物)+ロギング(記録をとる)の合成語です。魚や鳥、海中のほ乳類や爬虫類の体の一部や体内に小型センサやカメラ、GPSなどの機器(データロガー)を装着し、そのデータから動物たちの行動を解明しようという学問です。
人間が生き物とともに行動・観察できない領域のデータを取得できるという点で優れた手法で、新しい発見が続いています。動物生態学の分野にいくつもの革命を起こしたと評価されています。
日本の得意技を背景に、世界をリードする学問に成長
高性能小型カメラに小型センサ、小型通信機器が不可欠なのがこの学問分野。となると、おのずと日本の得意技が生きることになります。
動物たちにとってできるだけ少ない負荷ですめば、動物たちの自然で本来の行動パターンのデータを収集できます。まして、体内に埋め込むタイプの機器となると、小さければ小さいほど負荷は少なくてすみます。当初は欧米で開発された機器は日本で進化をつづけ、研究者の求めに応じて多様な能力の機器も開発されることになりました。
しかも、日本には好奇心の強い、優れた若い研究者がぞくぞくと誕生しています。その若い研究者たちは、世界各地の辺境の地、極限の世界にまで出かけ、データを集め、先端の論文を数多く書いています。
この本を手にされたみなさまに
──荒井修亮(日本バイオロギング研究会会長)
発刊にあたって
最新科学「バイオロギング(Biologging)」とは、バイオ(生き物)+ロギング(記録をとる)を組み合わせた和製英語です。日本の研究者が考えた言葉ですが、今日では、世界の研究者間で正式な学術用語として定着しつつあります。
生き物たちに記録計を取りつけて、いろいろなデータを収集するバイオロギングという手法を使って、私たち日本バイオロギング研究会の会員たちは、おもに水中に生活する動物たちを対象として研究を行なっています。研究成果は、学術雑誌に投稿されたのち、同じような研究を行なっている匿名の研究者による点検を受けて、何度も何度も修正を繰り返したあとにようやく論文として出版されます。しかし、その論文の多くは英語で書かれるため、なかなか一般の方が目にする機会がありません。
研究会では、こうした英語などで書かれた学術成果の内容を多くのみなさまに知っていただくことも大切だと考え、このたび『バイオロギング──最新科学で解明する動物生態学』の出版を計画しました。
本書で書かれている動物たちの不思議な行動は、バイオロギングという手法によって初めて明らかにされたもので、この数年間に内外の学術雑誌で論文として発表された研究成果の一端です。なるべく専門用語は使わずに、わかりやすく書くことを心がけましたが、少し難しい記述もあるかもしれません。もっと知りたい、あるいは疑問に思ったことなどがあれば、資料編に関係研究機関の連絡先などを収録しましたので、遠慮なくお問い合わせください。
目次
第1章
バイオロギング入門
- 初級編 革命的・動物観察法「バイオロギング」
- 中級編 データロガー開発を牽引する日本の技術力
- 中級編 データロガーは道具。使いこなす知恵こそ学問
- 上級編 情報の山から「宝」を探せ!
第2章
ウミガメ
- 母ガメは浜と餌場を700kmも大移動
- 子ガメの未来は測れるか
- クルクルまわって、こまめに方向修正
- 飼育ガメは「野性」を取り戻せるか?
- ウミガメだって日光浴で体温調整
第3章
海の哺乳類
- アザラシは教育ママ
- バイカル湖でアザラシのメタボ検診
- アザラシは真っ暗な海中でも迷わない
- 「眠る?マッコウクジラ」と眠れぬ私
- イルカは先をお見通し
- ジュゴンはいつ鳴く?
第4章
魚類
- 母川をめざす「サケの旅」を遡る
- サケだって、たまには休憩したい
- サケは「晴れの日」を待って産卵する
- クロマグロは水温変化に敏感だった
- 養殖クロマグロの「腹のうち」を探る
- マンボウには翼があった
- ICタグでアナゴの資源管理
- 魚の王様・マダイの「絶食ダイエット」
- 海を滑空するヒラメ
- 天然アカアマダイは品行方正
- 放流されたシロクラベラの行動は?
- 「エリ漁」の伝承を科学する
- 巨大メコンオオナマズは動かない
第5章
鳥類
- 歩くか、這うか?
- ペンギンの子育てには「個性」があった
- はばたけリトルペンギン
- 酸素を節約して楽々潜水!
- ペンギンたちの未来を左右するもの
- 潜水能力の秘密は「羽ばたき調節」
- 月の満ち欠けと一致するオオミズナギドリの行動パターン
- 巣立ったカツオドリを追って
- 逃げる魚を追うカワウ、そのスピードは?
第6章
バイオロギングでこんなことまで!
- 気ままなネコの行動が明らかに
- 「顎の動き」を調べてみると……
- 水中歩数計でウォーキングの効果を実感
- 人生もバイオロギングできる?
- 発見を支える統計学とモデル
こらむ
フィールドワーク奮闘記
- 無人島生活のお楽しみ
- オサガメを追って熱帯のギアナに
- 極寒のタイガの森においてきぼり
- 母の帰りを待ちわびて……
- クジラを追って山に登る!
- 逃した獲物は世界最大の哺乳類
- 広大な揚子江の小さなスナメリ
- Nature calls me
- アマゾンのマナティー調査
- サケの幸運を祈ってくれ!
- 幻の魚「イトウ」を追って
- 船上でひたすらマグロを待つ
- 「ペンギン村」を訪ねて
- 氷の下のコウテイペンギン
- 南極越冬生活の知恵──新聞発行の謎
- 無人島でオオミズナギドリ調査
こらむ
知れば知るほど
- 知りたくなかった「涙の真相」
- 聞こえない音をどう使う?──イルカとワカモノの共通点
- 八重山のジュゴン伝説
- 産卵中に心臓停止?
- 心電図で魚の「機嫌」をうかがう?
- メバルは鼻で家路につく
- 南極のペンギンたち
こらむ
BLS豆知識
- アルゴスシステム
- デジタルスチルロガー
- バイオテレメトリ(電波発信機)と切り離し装置
- 3軸地磁気データロガー
- ステレオ式自動水中音録音装置
- 超音波バイオテレメトリ
- 照度センサ付きデータロガー